
所在地:東京都中央区(本社)
事業内容:港湾荷役・陸上輸送・倉庫などの物流事業、プラント建設・メンテナンスなどの機工事業
導入範囲:サンキュウ・トランスポート各社(全国約33拠点)
ロジックス利用機能:案件管理、配車、請求、帳票カスタマイズ
本記事のサマリー
全国トップレベルの輸送力を誇る山九株式会社。そのような事業規模にもかかわらず、基幹システムを持たず、手書きやExcelといったアナログな手法を中心に、拠点ごとに異なる方法で運行・請求を管理していました。物流事業の収益性向上が経営課題となるなか、拠点ごとの個別管理では全体の収支を捉えきれないという課題が浮き彫りになったことを背景に、共通基盤の構築や収益性の可視化へと大きな一歩を踏み出しました。十数社のシステムを約3か月かけて比較評価した結果、ロジックスを選定。パイロット6拠点について約1年半にわたる段階的な検証を経て、現在は全拠点への展開を進めています。案件単位で収支を捉えるデータ基盤を足がかりに、広域配車や適正原価への対応を見据えた取り組みが始まっています。
山九株式会社のご紹介
山九株式会社は、1918年に山陽・北九州の港湾運送を主業務として発足し、2018年に創業100周年を迎えた東証プライム上場の総合物流企業です。港湾運送・陸上輸送・倉庫などの「物流」と、製鉄・石油化学・電力関連プラントの建設やメンテナンスを担う「機工」の2つを事業の柱に、国内38支店・海外38現地法人のネットワークを展開しています。
今回は、ロジックスの導入を牽引する物流事業本部 陸運部の皆様に、導入の背景や決め手、全拠点展開に向けた期待を伺いました。
ー まず、御社の事業概要と、皆様が所属されている部門について教えてください。
市川様(物流事業本部 陸運部 企画推進グループ グループマネージャー): 当社は、山陽地区や九州・八幡製鉄所での荷役等を担う会社として立ち上がったのが始まりです。「山陽」と「九州」、そして創業者が感銘を受けた「Thank you」という言葉になぞらえて「山九(サンキュウ/SANKYU)」という社名になっています。当初は港湾荷役が主でしたが国際物流や3PLなどに発展し、更に社会の要請に応じて工事・建設を担う部門も拡大していきました。現在は「物流」と「機工」が事業の大きな柱です。
私たちはそのうち国内輸送を担う物流事業本部の陸運部に所属しています。陸運部は、トラックだけでなくフェリーや鉄道貨物輸送も含め、グループの国内輸送事業全般を所管する部門です。輸送に関する戦略・戦術を立てるとともに、直系の子会社であるサンキュウ・トランスポート(以下、「トランスポート社」)の管理を担っています。
ー ロジックス導入の背景には、どのような課題があったのでしょうか。
市川様: 最も大きかったのは、全社に横串を通して案件全体を管理する仕組みを会社として持っていなかったことです。トランスポート社を設立した40年前から、管理全体をシステムに載せたいという構想こそあったものの、クラウドの登場など技術革新が進んだ現在でも、実現には至っていませんでした。
当社の輸送部門は、各地域に点在するお客様の工場のニーズに応えながら少しずつ大きくなってきた経緯があり、拠点同士の横のつながりを必要とすることはあまりありませんでした。しかしながら、当然ではありますが、会社として収益性を高めるためにエリアごとの輸送ではなく、ネットワークを強化していく方向に舵を切り出しました。そのとき、基幹システムがないために、運送の収益性の把握や、その改善のレバーがどこにあるのかが分かりにくい状態でした。データ基盤を手に入れたい。それがそもそもの目的です。
物流事業本部 陸運部 企画推進グループ グループマネージャー 市川 寛之 様
ー それまでは、日々の運行や請求をどのように管理されていたのですか。
市川様: 配車もアナログかつ拠点ごとに異なるやり方でした。ホワイトボードで配車組みをし、実績はExcelで管理。ただ、日々の売上もExcelでリアルタイムに積み上げている部門はごく少数で、大半は事後入力。月の途中で数字をきっちり追えている現場は限られていました。
請求・支払を処理し管理会計につなぐシステムはあったので、社内資料などはそこに入力したデータを会社・営業所ごとにCSVで取り出し、加工して手作業で作成していました。ただ、請求書の発行だけに使う拠点もあれば、独自にExcelで管理する拠点もあり、統一的なルールはない状況でした。包み隠さずお伝えすると、30数拠点のうち1割ほどは、そのシステム自体を使っていない状態でもありました。
ー ネットワーク強化に向けて、基盤を整えたかったということですね。
市川様: 基盤を整えることも大きな柱ですが、その前段として、自分たちの担う輸送部門がどういう成績なのかを定量的に、リアルタイムに把握したいと考えていました。実輸送を担うトランスポート社の収益だけでなく、元請けの立場にある山九本体と一連でつなげたとき、全体として利益が出ているのかどうかをはっきり示せる仕組みが絶対に必要だと考えていました。

ー ロジックスを知ったきっかけを教えてください。
市川様: 最初の出会いは、展示会の講演でした。私が異動してわずか1か月の頃、当社の安全管理の仕組みについて登壇することになっていて、ひとつ前のコマがアセンドさんのロジックスだったんです。まさに課題感を持っていたときでしたので、話を聞きながら「これは有効そうだ」と密かに思っていました。
ただ、そこはフラットに評価した方がいいと思い、十数社を対象に約3か月かけて市場調査を行い、各項目に点数付けをしました。経済産業省が出している「『物流デジタルサービス』事例集」なども参考にしています。
ー どのような観点で評価されたのですか。
市川様: 受注から請求までの各機能と費用面を、約35項目で評価しました。そのうえで、管理会計システムや他システムとの連携の度合い・自由度、入力の簡便さ、協力会社との案件連携といった重要項目には重み付けをして、かなりシビアに採点しました。
なかでもこだわったのが配車表です。A拠点の配車表をB拠点でリアルタイムに見られ、お互いに荷物をやりとりできる環境でないと、実車率は上げられません。当社は、工場に合わせた地方発の荷物を多く持っている強みがあります。いわゆる「帰り荷」も多いのに、これまでは各拠点が片道でしか手配できていませんでした。ひとつのクラウドの画面上でやりとりできれば、AIによる自動配車や配車拠点の集約まで見えてきます。
丹下様(同グループ 係長): 評価の結果、ロジックスは標準機能でカバーできる範囲が非常に広かったんです。私たちが挙げた機能をすべて網羅できる製品は、実はなかなかありません。機能の汎用性、費用対効果、そして開発ロードマップも含めた将来の拡張性を踏まえて選定し、最高評価を付けました。
市川様: 整理すると、
の3点が決め手になりました。
(ロジックスを組み込み、『山九版TMS』を上図のとおり設計)

物流事業本部 陸運部 企画推進グループ 係長 丹下 伸彦 様
ー 導入を進めるにあたり、工夫された点を教えてください。
市川様: 私自身の強い思いとして、「検証にはしっかりと時間をかけよう」と決めていました。2024年12月に評価を終えて経営の承認を得たあと、まず鹿嶋(茨城県)と京都の2拠点でテストをし、その結果をもって4拠点を加え、パイロット拠点を6つに広げました。ここまで約1年半です。大きな方向性を決めるフェーズなので、経営層にも時間をかけることへの理解をいただきました。
鹿嶋は、複数の事業を併せ持ち多様な輸送形態がある拠点で、関東に近く足を運びやすい。その鹿嶋と相互での車両・案件の融通もある京都、ということで選びました。追加の4拠点は、トランスポート各社から1拠点ずつ選出して分散させています。身近に導入できている拠点があれば、本格導入のときのアレルギーを少しでも抑えられると考えたからです。
丹下様: トライアルの段階で先行ユーザー様の現場も見学させていただきました。導入後にどういう姿になるのか、現場にもできるだけ具体的なイメージを持ってもらうためです。
市川様: その後の全拠点導入に向けて、納得感を持って受け止めてもらえるよう、東は鹿嶋、西は京都に各社の担当者に集まってもらい、実際の運用を見てもらいました。できる限り経営層に近い方に来てもらうようにしています。何が達成できるのかという将来の夢も、私たち自身の口からしっかり説明するようにしました。
ー 進めるなかで、ご苦労された点も率直に教えてください。
田中様(同グループ 企画推進担当マネージャー): ロジックスに業務を載せていくためには、既存業務を構造的に可視化・言語化するということが必要になりますが、これには結構苦労しました。現場の皆さんにとっては普段の業務は「当たり前」で、これをメタ認知するのはなかなか至難の業でしたね。
そのために「こういう要件に整理して、こういう運用にしよう」と解決したと思っていても、後から隠れていた業務が出てきて解決していなかったり。そんな「もぐらたたき」のような状況が延々と続いたこともありました。横で1日見ているだけでは把握しきれない部分もあり、規模の大きい会社としては、ある程度仕方のないところだと思います。
物流事業本部 陸運部 企画推進グループ 企画推進担当マネージャー 田中 伸幸 様
丹下様: そのような状況を見て、まずはパイロット6拠点で課題を出し切ることに注力しました。アセンドさんは運送業の業務をよく知っているので、ヒアリング力が高いことも助かりました。要望の8割ほどはそこで拾えた実感があり、段階を踏んだ導入の良さだと思います。
次なる全拠点展開では、各地域の導入推進者が参加する「判定会」と呼ぶ場で、事前に期限を区切りながら集めた要望に対し、「課題はここまで整理しましたね」と合意を取りながら進めるようにしました。拠点ごとに個別化した業務も多々ありましたが、アセンドさんが、システム要件に落とせるよう標準化を意識しながら整理してくれたのも、全体業務を俯瞰するうえでありがたかったですね。
また、導入時はどうしても現行の業務と並行する期間が出ます。従来の請求金額を「正解」として、新しい仕組みでも円単位まで一致するかを突合する。泥臭いですが、拠点ごとに大きな負荷を抱えながらも努力してくれたおかげで、ここまでこぎ着けました。
ー トランスポート社の全拠点への展開も見えてきた今、率直に費用対効果はどのように考えていらっしゃいますか。
市川様: 経営層には、導入の狙いを2段階で説明しています。第一段階は、請求用システムへの二重入力や帳票作成のための多重入力がなくなるといった、事務工数の削減です。その先の第二段階が、実車率の向上や配車の効率化など、収益性の改善につながる効果です。
実は、この第一段階の効果だけで契約金額に見合うかどうかを、導入判断のキーにしていました。試算は現場でのタイムスタディに基づいて行いました。従来の入力とロジックスでの入力を実測し、1レコードあたり何秒縮まるかを出して、それを総数に掛け合わせる。確からしい数字で説明することにこだわりました。
従来のシステムを完全に置き換えられれば、配車と切り分けずに入力できる分、工数は確実に減ります。第一段階の効果を実現する道筋は見えていますので、まずはそこをしっかり出し切ること。そのうえで、第二段階の効果に進んでいきたいと考えています。
ー 今後、ロジックスの活用と共に見据えていることや、期待されることを教えてください。
市川様: 現状はトランスポート社への導入を進めていますが、次のステップとして、元請け側である山九本体も、グループ全体の輸送業務をロジックスの基盤の上に載せていきたいと考えています。
特にトランスポート社との間では、1件の案件レコードを登録したときに、売上情報と配車情報が入り、粗利益が出て、原価について元請け側(山九本体)とトランスポート社の双方で把握できることを目指していきます。そうすれば、適正な利益が出ていれば事業の拡大を、反対に赤字であるなら原因究明と対策を、という判断ができる。いろいろなゴールはありますが、ここはぶれずに目指すべき北極星と考えています。
そのためには、先ほど申し上げた第一段階の効果(業務工数削減)で満足せず、ロジックス上でしっかりと配車行為まで行うことが必須になるので、今一度運用を徹底していきます。
私たちは「トップランナー方式」と呼んでいるのですが、近くにうまく使いこなしている人がいる環境をつくることが非常に重要かなと。「あそこがここまでできているなら、うちでもできるだろう」と、オセロをひっくり返すように取り組みを広げていきたいと思います。
ー トランスポート社統合や、法規制の動きとも重なりますね。
市川様: データ基盤づくりを先行して進めていたところに、トランスポート社を1社に統合することが決まりました。車の流れや、どこに何台あればいいかを、社を越えて全国ひとつで考えるには、どうしてもデータ基盤が必要です。時代の方が後から追いついてきてくれたような感覚です。このタイミングを逃していたら大変だったでしょう。
アセンドさんには、国の方針などについて個別のディスカッションや社内セミナーを通じて、情報を共有していただいています。元請け部門(山九本体)とトランスポート社がそれぞれ正しく入力すれば、その契約や営業所が適正原価をクリアしているかが返ってくる。適正原価に対してロジックスがどう答えを出してくれるのかは、とても期待しています。
車両管理についても、統合を機にデータで統一したいと考えています。走行にかかる変動費はロジックスとデジタコの連携で取れる。修繕費や償却といった固定費の記録も積み上げて、車両1台ごとの「一生の成績表」を作りたい。ロジックスの良さのひとつは連携の自由度が高いことなので、使えるものはつなげていきたいですね。
ー 業務の標準化は、組織づくりにも関わりそうです。
市川様: 統合後のトランスポート社では、管理者を自律的に育てていかなければなりません。そのときに統一の言語がないと、ある拠点で「優秀」と言われても、それが他でも通用するのか分からない。プラットフォームが同じでないと、評価の仕組みづくりが毎回ゼロからのスタートになってしまいます。人材育成の面でも、ロジックスを中心とした仕組みの役割は大きくしていかなければと思います。
ー 最後に、同じような課題を抱える企業の皆様へメッセージをお願いします。
市川様: 少しかっこいい言い方をすると、当社のように多くの車両を持つ規模の事業者は、業界を引っ張っていかなければならない立場だと思っています。適正原価制度をはじめ、業界を取り巻く環境が大きく変わるなか、適切に実態を踏まえて経営判断・改善を進めるには、輸送に関わるデータを集約し、定量情報をもとに社内外と議論できる体制構築が、規模を問わずこれからますます大事になるはずです。
40年前、入力の手間を負いきれずに構想を断念した輸送管理システムも、今はクラウドの仕組みがあり、現場で無理なく使えるシステムがあります。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは案件を登録し、データをためるところから始めてみる。実際に現場を回ってみると、見えていなかった課題や、標準化できる部分が必ず見えてきます。少しの成功を現場が実感できると、次の段階へすすむモチベーションに繋がります。そして、その一歩一歩が、会社の形を変えていく力になると実感しています。

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